5.頑固な皮膚病の漢方治療効果
目的
生活習慣と環境の変化により、様々な皮膚病が増えている。西洋医学の抗アレルギー剤の服用と塗り薬の外治ではなかなか改善されない頑固な皮膚病がある。本治療は西洋治療で改善されない皮膚病について、漢方煎じ薬の内服で、良好な結果を得たので報告する。
方法(症例紹介)
漢方煎じ薬を処方し、内服治療を実施。漢方治療前、すべての症例が皮膚科で長期間の治療をしている。漢方治療は基本的に1ヶ月単位の投薬、経過をみて処方を調整。本人の判断により西洋薬を中止、あるいは漢方治療と併用する。
症例1(乾癬・41歳/女性)
20代から乾癬と診断され、全身湿疹、かゆみ。06年10月より「養血潤燥、涼血解毒」の漢方煎じ薬を服用。
症例2(湿疹・19歳/男性)
13歳から両手、足が湿疹、痒み、皮膚割れ、出血。07年2月より「疏風活血、健脾利湿」の漢方煎じ薬を服用。
症例3(湿疹・68才/男性)
63歳から全身湿疹、かゆみ。高血圧、喘息、糖尿病もあり、12種類の薬を服用中。07年12月より「疎風清熱、涼血解毒」の漢方煎じ薬を服用。
症例4(湿疹・19才/女性)
16歳から両膝に発症、その後両足、両手、背中など全身に広がり、痒みもあり。08年6月より「清熱解毒、活血涼血」の漢方煎じ薬を服用。
経過・結果
症例1
2ヶ月目より効果が出る。一年間の治療で完治。現在再発なし。
症例2
服用19日目で効果が表れ、一年間でほぼ完治。その後、漢方薬を減量して服用、08年9月に完治し、漢方治療中止。
症例3
2週間目から効果が出て、約40日間でほぼ完治。現在喘息と腎機能を高める処方に変更、漢方治療継続中。
症例4
4ヶ月後から好転、6ヶ月目で著しく改善し、現在漢方治療継続中。
当薬局では様々な皮膚病の症例に、漢方薬服用が3ヶ月未満の症例を除き、全症例に満足な効果を得ることができ、完治した症例も多く、再発しにくい。
考察
皮膚病の漢方治療については、古典の「当帰飲子」方を始め、「温清飲」「荊防敗毒湯」方、「消風散」方など漢方処方があり、本治療は現代人の生活環境、体質に合わせて古典処方を加減・変更し、西洋治療で改善できない皮膚病に対して、著しく効果があることが観察できた。
結語
西洋医学ではなかなか効果が満足できない頑固な皮膚病に対して、西洋医学の「外治」と漢方医学の「内治」の組み合わせは、理想的な治療法と考えられる。また古典の皮膚病の漢方処方は現代人にも優れた効果があると思う。
第12回日本統合医療学会学術集会
{会 期}2008年12月6日~7日
{会 場}九州大学医学部 百年講堂
{主催者}日本統合医療学会
{演 題}頑固な皮膚病の漢方治療効果
発表者 侯 殿昌 孔 徳美 北京懐仁堂漢方薬局